要旨：

情報ネットワーク社会における情報チャネルの増加は、消費者の選択の多様化を生むのであろうか、集中化を生むのであろうか。我々は、この疑問に答えるために、消費者の購買行動とコミュニケーション行動をモデル化し、情報チャネルの増加が、社会の消費傾向に与える影響を考察した。情報チャネルとは、個人間の情報交換を可能にする情報流通メディアの種類とその容量である。我々は、情報チャネルが増加することによるWinner-Take-All現象のモデルの構築と、シミュレーションによる説明理論の構築を試みる。 近年の情報ネットワークの発展により、双方向情報チャネルが増加し、消費者が入手できる情報の量と多様性が増大した。これにより、消費者は幅広い選択肢からの選択が可能になる。しかし近年の社会において、至るところにWinner-Take-All現象が観察可能である。Winner-Take-All現象とは、ある市場において消費者の選択が、特定の財に集中していく過程をいう。例えば、電話サービスやオペレーティングシステムなどが事例として挙げられる。この市場の特性は、ネットワーク外部性が働くことである。我々の調査では、音楽ソフト市場や映画ソフト市場でも、Winner-Take-All現象が進行していると観察できる。この現象のメカニズムを解明するため、情報チャネルの性質に着目し、消費行動に関するマルチエージェントモデルを構築し、シミュレーション実験を行った。 シミュレーションにより、近年の情報チャネル、すなわち双方向的情報ネットワークの発展が、Winner-Take-All現象を強化する効果を持つという結果を得た。また、情報チャネルと消費者の構成比率の相互作用により、多様化社会と集中化社会に分岐するシナリオが提示できた。

キーワード :

ウィナーテイクオール, 情報チャネル効果, 消費者行動, エージェントベースドアプローチ

---

Abstract:

Does increasing the number of information channels in the information network society diversify or concentrate consumption variety? To answer this question, we studied how increasing the number of information channels affects consumption behavior in our society. We develop a model of a winner-take-all phenomenon by an information channel effect. An information channel is defined as an information communication medium, and channel quantity is defined as the amount of information it can exchange between individuals. From the simulation results we obtained, we conclude that the ongoing development of information channels, i.e., the development of interactive information networks, tends to strengthen winner-take-all phenomena. We propose a scenario under which the society branches off from variety consumption or concentrated consumption by interactive effects between the number of information channels and the composition of consumers.

Keywords:

Winner-Take-All, Information Channel Effect, Consumer Behavior, Agent-Based Approach

---

The version below was edited prior to publication, and hence is not the final version.

PDF format