情報処理学会研究報告,Vol.2004,No.29,pp.147-152,2004.
山本仁志,石田和成,太田敏澄
要旨:インターネットの普及によって、消費者間オンライン市場という新しい取引形態がもたらされた。しかし、ネットワークを介したコミュニケーションの特性として、匿名性や参加離脱の容易性があるため、参加者には貢献することなくサービスを受け取りたいという誘引が働く。また一方で、ネットワーク上では、参加のためのコストや情報投入のコストが低いことから、利他的な行為をもたらす誘引も働く。オープンソースコミュニティなどが一例である。こうした環境下で、非協調行動を抑制するメカニズムとして、参加者相互が取引相手を評価し、その結果を評判として共有する評判管理システムがある。我々は、先行研究において、囚人のジレンマの枠組みでオンライン市場をモデル化し、シミュレーション実験をおこなった。その結果、オンライン市場では、ポジティブ評判管理システムが協調行動を促進することを示した。本論文は、囚人のジレンマを表現する利得行列に対して、「誘惑」「貢献」という二つの指標を提示することで、取引される財の特質を議論することを可能にした。更にシミュレーション実験により、オンライン市場では物財の取引にはポジティブ評判システムが有効であり、情報財の取引では、ネガティブ評判システムが有効であることを示した。 キーワード:
評判管理システム、繰返し囚人のジレンマ、C2C市場、エージェントアプローチ
proceedings(6 pages)